生田宏一 ウイルス・再生医科学研究所教授、榛葉旭恒 同研究員らの研究グループは、大阪大学、九州大学、ドイツがん研究センターと共同で、ステロイドホルモンの一つであるグルココルチコイドが、免疫を担うTリンパ球の体内循環と免疫応答能の日内変動を制御し、免疫力を高めていることを明らかにしました。このメカニズムは、不規則な生活によるグルココルチコイドの分泌の乱れが免疫力の低下をもたらす可能性を示唆します。
本研究成果は、2018年1月24日午前2時に米国の学術誌「Immunity」電子版に掲載されました。
■研究者からのコメント
人においても同じ仕組みが働いていると考えられ、気管支喘息などのアレルギーや関節リウマチなどの自己免疫疾患の症状が朝に強いこととの関係について、さらなる研究に発展することが期待されます。
■概要
グルココルチコイド(糖質コルチコイド、ステロイド)は、強い免疫抑制作用を持ち、抗炎症剤や免疫抑制薬としてさまざまな病気の治療に用いられています。グルココルチコイドの濃度は、早朝にピークになり、昼間は高く、夜間は低値となり(マウスでは逆転)日内変動していますが、免疫機能との関係については今まで不明でした。
本研究グループは、グルココルチコイドの濃度が日内変動することに着目し、一日の各時間帯におけるマウスのTリンパ球の変化を解析しました。その結果、グルココルチコイドが、Tリンパ球のサイトカイン受容体IL-7Rとケモカイン受容体CXCR4の発現量を夜間に高め昼間に下げていること、その日内変動が、昼間に血中に留まり夜間にリンパ組織に集まるTリンパ球の体内分布の日内変動を引き起こしていることがわかりました。さらに、Tリンパ球が夜間にリンパ組織に集まることにより、リンパ球がより効率的に活性化され、強い免疫応答が引き起こされることがわかりました。
以上の結果から、免疫抑制作用で有名なグルココルチコイドが、生体内においてはTリンパ球の循環と応答の日内変動を制御することで、逆に免疫機能を高める働きをもつことが明らかになりました。
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