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NEC、人間の耳には聴こえない音で個人を識別する耳音響認証技術を開発

記事公開日時 : February 28, 2018, 11:50 pm
ACROFAN=金 炯根 | hyungkeun.kim@acrofan.com | SNS
 NECは、長岡工業高等専門学校の協力により、耳穴の形状の個人差を音で測定する独自のバイオメトリクス認証「耳音響認証」(注1)の強化技術として、人間の耳には聴こえない音(非可聴音)で個人を認証する技術を開発しました。これにより、ユーザの行動や作業の妨げにならない常時認証によるセキュリティの向上を実現します。

今回開発した技術は、マイク一体型イヤホン(以下、イヤホン)から送出する高周波の非可聴音により、耳穴の形状を表す音響特性を正確かつ安定的に測定することを可能にしました。

本技術は、重要インフラ施設の保守・管理や警備などでの安全・安心に関わる業務でのなりすまし防止や、医療現場やコールセンターなどでのハンズフリー認証による業務効率化、さらに人々の生活に密着したスマートイヤホン領域などへの応用を視野に、2018年度の実用化を目指します。

NECは「社会ソリューション事業」に注力しており、中でもセーフティ分野を強化しています。NECは、今回の新技術をはじめ、顔認証・指紋認証・声認証など世界トップクラスのバイオメトリクス認証技術を有しており、セーフティソリューション提供を通して、安全・安心な社会の実現に貢献していきます。

■背景

バイオメトリクス認証は、顔や指紋など生体情報を活用して本人を確認できる技術です。認証の速さと正確さ、高い利便性を有しており、セキュリティ分野での利用が拡大しています。なかでも、耳を使った耳音響認証は、常時認証が可能なため、始めに認証を行った後も継続的に認証することで、その後のユーザのすり替りを防止できます。またハンズフリーで認証可能なため、作業中の場面でも継続して本人の確認が可能です。

しかし従来の耳音響認証は、常時認証する場合、人間の耳に聞こえる音(可聴音)が出てしまうため、作業や思考の妨げになる、周囲の音が聞き取れない、ユーザに不快感を与えるなど、快適性に課題がありました。

今回、NECは、非可聴音により、ユーザが意識することなく継続的に個人認証できる耳音響認証技術を開発しました。

■新技術の特長

・非可聴音によって耳穴(外耳道)の音響特性を正確かつ安定的に測定

人間の耳では聞こえない高周波(18~48kHz)の音を耳穴(外耳道)に送出し、その反射音を分析して個人の特徴を抽出します。反射音としてとらえた30kHzから40kHzの周波数帯は、個人差が現れやすく、個人に特有の特徴を抽出できます。しかし、高周波の音は、周囲の電気機器やイヤホン自体が発する高周波ノイズの影響を受けやすく、また外耳道の内壁に当たっても反射せず壁面に吸収されやすい性質があるため、反射音の取得は容易ではありません。これに対して次の2つの手法を開発し、高周波の音響特性の正確かつ安定的な測定を実現しました。

(1)短時間同期加算法

非可聴音を反復的に送出して複数回の特徴抽出を行い、それらを平均することにより、ノイズを低減して本来の外耳道の音響特性を強調。

(2)対数フィルタバンク法

個々の周波数ごとに取得された音響特性はノイズの影響で安定しないため、隣接する周波数をまとめた上で音響特性を平滑化することで、ノイズの影響をさらに低減。

今回、イヤホンの設計についても、マイクやスピーカーの形状や配置、構造などを工夫することで、高周波の反射音の効率的な取得を実現しました。


例えば、イヤホン装着時に、従来の可聴音での認証を行うことで、ユーザ自身が認証されたことを確認し、以後、装着中は、作業の妨げにならない非可聴音で常時認証を行います。このような利用により、イヤホンの着脱があっても、99%以上の高精度な認証精度とより快適な使用感を備えた耳音響認証を実現します。これによりバイオメトリクス認証の利用シーン拡大によるセキュリティの向上に貢献します。

なお、NECと長岡工業高等専門学校は、今回の成果を、3月13日(火)から15日(木)まで、日本工業大学宮代キャンパス(埼玉県南埼玉郡)にて開催される「日本音響学会2018年春季研究発表会」において、13日(火)に発表する予定です。

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