世界的なエネルギー需要増が見込まれるなか、持続可能な社会実現へ向けてSDGs、COP21などの環境負荷低減に向けた目標が掲げられています。特に、これから爆発的な普及が見込まれるEVの電力消費量の低減は必須であり、インバーターの省エネ化を実現するSiCを半導体材料としたパワー半導体が注目されています。SiCパワー半導体の課題として、SiCはシリコン(Si)とは異なり、結晶面によって抵抗が大きく異なることが挙げられます。そのため、従来のDMOS-FET(図1(1))に対して低抵抗な結晶面に電流を流すトレンチ型SiC MOSFET(図1(2))が提案されていますが、トレンチ底角に電界が集中しやすい構造のため、高耐久性との両立が困難でした。
これまで日立では、低抵抗・高耐久性を両立するSiCパワー半導体として、日立独自構造となるFin状トレンチ型DMOS-FET "TED-MOS"を高耐圧産業用途(3.3 kV)に開発し、2018年5月に開催されたInternational Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs (ISPSD)にて、トレンチ間隔を狭めることで耐圧を維持しつつ低抵抗化できることを発表しています。
今回、このTED-MOSの特長を生かして、さらに高電流密度が求められるEV向け1.2kV耐圧のパワー半導体(図1(3))を開発しました。電流の集中するデバイス中央部に電圧のかかり方を緩和する「電界緩和層」を新たに設け、電界強度を大幅に低減しました。さらに、デバイス中央部を低抵抗化する「電流拡散層」を設け、SiCの中でも抵抗の小さい結晶面であるFin状トレンチの側面とつながる電流経路とするデバイス構造を開発しました。これにより、本デバイスは、電界強度と抵抗の低減の両立を実現します。
本技術の効果を試作したデバイスで検証したところ、電界強度を従来のDMOS-FETに比べて40%低減し、EVモーター駆動に求められる1.2 kVの耐圧を確保しつつ、抵抗を25%低減できることを確認しました。また、ひれ状の溝を形成した構造と、電界強度と抵抗の低減により、デバイスのオン/オフ切替が速くなり、切替時の電流によるエネルギー消費を50%低減することにも成功しました。
今後、日立は本技術を社会インフラシステムのさまざまな電力変換器に適用することで、地球温暖化防止、低炭素社会の実現に貢献していきます。本成果は、2018年9月3日~6日に英国バーミンガムで開催される「European Conference on Silicon Carbide and Related Materials(ECSCRM)」にて発表する予定です。
本リリースの詳細は下記URLをご参照ください。
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概要:日立製作所
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