製造全般において多くの作業が自動化されるようになるにつれて、ますます多くの作業において人手労働への依存が軽減され、最終的には現場で照明さえ不要となるような製造(Lights-out manufacturing、完全自動製造)が目指されるようになりました。
完全自動製造とは、製造が完全に自動化され、製造現場で照明や換気さえ不要で人的介入を必要としない製造方法です。先端技術調査を専門とする米調査会社ラックスリサーチの新しい調査によると、この完全自動製造の実現を目標とする企業が多い一方で、この分野には障壁も大きく、実現までには長い期間が必要であることがわかりました。
ラックスリサーチは、新しいレポート『The Path to Lights-Out Manufacturing(完全自動製造への道のり)』にて、完全自動製造に関連するロボット技術、完全自動化の主な推進要因や障壁、完全自動化の今後の展望など、完全自動化製造の実現するためのロードマップを取り上げました。
ラックスリサーチが独自に開発したイノベーション動向分析プラットフォームであるラックス・テックシグナル(Lux Tech Signal)によると、過去5年間で投資家の間において完全自動製造に対する関心は着実に高まっています。その背景として、先進ロボット、コンピュータビジョン、産業IoT、機械学習アルゴリズム、コンピューティングなど、自動化を支える技術の進歩が目覚ましいことが挙げられ、2015年以降、製造業におけるロボット化・自動化への投資は大幅に増加しています。これら投資の大半はスタートアップ企業に対するベンチャー投資という形で行われていますが、北米とアジアが製造業のロボットと自動化における投資が最も多く、IPO後の企業による資金調達も数百万ドル規模となっています。
今回の調査を担当したラックスリサーチのシニアリサーチアソシエートのMiraj Mainaliは次のようにコメントしています。
『完全自動製造を実現するには、資材の移動、タンクの清掃、製品や資産の検査などの物理的なプロセスを自動化するためのロボット技術と、ソフトウェアベースの論理プロセスの自動化の両方が必要となります。物理的な作業を自動化できるロボット技術は数十ありますが、本調査では、ロボットアーム、自動移動式ロボット(AMR)、足付きロボットなど、重要が最も高い技術を特定し、それら技術の平均な技術成熟度を分析しました。加えて、今回の調査では、完全自動製造の主要な推進要因と障壁も特定し、それらの重要性を評価しており、完全自動製造の実現を複数分野において比較・評価するために活用できるフレームワークも提供しています。
今回の調査結果を受け、ラックスリサーチは、高度に成熟したロボットを1〜2分野でのみ必要とするような製造作業のほとんどは、2020年代後半から2030年代前半にかけて自動化されることになると予測しています。しかし、機器の修理や設置のように十分構造化が進んでいない作業においては、常に何らかの人的介入を必要とし、完全に自動化されることはないでしょう。完全自動製造を達成することは、多くの製造会社にとって究極の目標ではありますが、多くの課題があり、実現までには長い時間を要するため、現時点では現実的であるとは言い難い状況です。』
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