今後数年間に新車購入を考えている幅広い消費者の間でADASは大きな需要があると見込まれます。当社の調査によると、自動車メーカーによるADAS関連ビジネスも加速的に拡大する傾向にあり、2030年までにはグローバルベースで1,910億ドル近くの市場規模になり、このうち37%がサブスクリプションからの収益となることが予想されます。
ADAS(先進運転支援システム)に関する調査について
時期: 2023年上半期
実施: アリックスパートナーズ
対象: 米国、ドイツ、中国の18歳以上の消費者3,239名(米国1,016名、中国1,220名、ドイツ1,003名)
内容: ADAS機能に関する認知度、普及率、利用状況、満足度、購入意思決定への影響、他の消費者への推奨度など
米国、ドイツ、中国の3,200人以上の消費者を対象に実施した本調査では、ADASを利用したことがない層、または過去にADASで不快な経験をした層を含め、回答者の多くがADASの機能を信頼すると回答しています。信頼する機能は、自動車技術会(SAE)の定める自動運転レベルの衝突警告などに対応する「レベル1」から、ステアリング、ブレーキ、緊急時の自動運転の完全制御などの最上位の「レベル4/5」まで広範囲にわたります。(図-1) また、消費者はADASの技術がそれほど高度でない「レベル2」に2,800ドル、「レベル2+/レベル3」には4,300ドルを支払う価値があると考えています。(図-2)
図-1: 自動運転機能への信頼度合い |
図-2: 自動運転技術への許容価格(USD) |
また、回答者の多くが、次回の購入時に重視するADAS機能として、アダプティブ・クルーズ・コントロール、自動緊急ブレーキ、高速道路でのハンズフリー走行、渋滞時の車線追従や自動駐車を挙げています。ADAS体験者は、ADASを経験したことがない層と比べてこれらの機能への期待値が12〜52%ほど高くなります。(図-3)
図-3: 次回購入時に重視するADAS機能 |
消費者がADASを積極的に採用したいとする傾向は、アリックスパートナーズの「グローバル自動車業界見通し」レポートを含む最近の自動車業界調査でも明らかになっています。特に中国市場においては、消費者は馬力やハンドリング、その他、目に見えない車両属性よりも、「CASE」(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)技術を重視する傾向にあります。
その他に、本レポートで明らかになったポイントは以下の通りです。
・ADAS体験者は、完全自動運転の「レベル5」に対しての消費意欲が、未体験者と比べ平均で31~40%ほど高い。
・60%の消費者が、安全性と利便性を重視した機能のサブスクリプションを検討している。
・「レベル2」および「レベル3」のADASシステムのコストは、ハードウェアコストの削減により2030年までに38%減少する。
・高度なADASシステム(「レベル3」以上)については、消費者の43%が都度払いまたはサブスクリプションを好み、41%のみが前払いを選択している。
アリックスパートナーズのマネージング・ディレクターで自動車・製造業プラクティス日本チームリーダーである鈴木智之は次のように述べています。
「本調査の結果では、消費者はADASによって実現する安全性やコネクティビティに対価を払う意思があることが明らかになりました。自動車メーカーにとっては、正しく対応することで消費者の満足度を満たすだけでなく、サブスクリプション・プランの実現による定期的な収益源の確保や、保証コストの削減等につながる絶好の機会といえます。業界の未来は、安全志向であれコネクティビティであれ、日常運転に必要な機能を重視する消費者がリードする形で、最新のテクノロジーの重要度が一段と高まります。消費者が深く関心を寄せるADAS技術についてはできる限り先手を打つべきであり、今後は、新機能や革新的な価格モデルで主導権を握る企業こそが成功の軌跡を辿るでしょう。」
* 運転中のドライバーの安全を確保するためさまざまなサポートを行う技術。メーカーにより実現方式や搭載機能が異なる。
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